NOACについてのポイントまとめ
最近ぐっと処方頻度が増えて、市民権もかなり得てきたNOAC。
作用機序で分けると以下2分類に分かれます。
FXa阻害剤
- イグザレルト(リバーロキサバン)
- エリキュース(アピキサバン)
- エドキサバン(リクシアナ)
直接トロンビン阻害剤
- プラザキサ(ダビガトラン)
の4つが現在用いられているものです。
用途としては大きく分けて二つ、非弁膜症性心房細動による血栓症の抑制、深部静脈血栓症です。
ワーファリンと適応の面での違いは、弁膜症性の心房細動にはNOACは使用できない、ということです。
血流の遅い静脈血での赤色血栓による血管閉塞の予防、ということですね。
要するに心房細動によって引き起こされた、心房での血流うっ滞による凝固能亢進に対する薬です。
外来では、心房細動で処方されるケースがほとんどかと思います。
基本的に心房細動があって、CHADS2スコアで2点以上の方に抗凝固薬の服用が推奨されます。
ちなみにCHADS2スコアとは血栓症のリスク分類です。
- (1) Congestive heart failure 心不全
- (1) Hypertension 高血圧
- (1) Age ≧ 75 年齢
- (1) DM 糖尿病
- (2) Stroke / TIA 脳卒中既往歴
それぞれに該当したものは点数が加算され、脳卒中においては2点という設定になっています。
高齢者では高血圧の罹患率が高いので、それだけでもスコアは2点となり服用推奨、ということになります。
排泄は全て腎排泄の傾向があり、透析患者などでは使用できません。
◆ワーファリンからNOACへの切り替えでの注意点
ワーファリン服用からNOACへの切り替えがあるケースは多いです。
切り替え時のPT-INRの指標は、
- 70歳未満 PT-INR < 2.0
- 70歳以上 PT-INR < 1.6
になってからということになっています。こういった数値が決められているのも、まだNOACに対する解毒剤が開発されていないためです。
もし大出血が起きたら凝固因子製剤を投与するしかありません。
薬局ではPT-INRをみせてもらうのが理想でしょう。
それでは、簡単に各論でまとめていきたいと思います。
一日あたりの薬価はワーファリンの約20倍です。いい薬ですがお高いですね....。
イグザレルト
1日1回。
1回製剤なのでアドヒアランス良好
エリキュース
1日2回。
腎排泄の割合が比較的低く、使いやすい。なので腎機能低下例には積極的に推奨。
出血リスクも優位に低いとのデータもあるようです。
ただ2回なので窓口で話を聞いていても、結構飲み忘れが散見される気もします....。
リクシアナ
1日1回。
今のところ薬価が一番高いです。
プラザキサ
1日2回。
消化管出血リスクが少し他のNOACより高いです。
有効性の面では、ワーファリンよりも優位に脳梗塞予防効果があると証明されている唯一のNOACです。
今回の記事は、全面的に「サラッと納得!経口抗凝固薬」という書籍を参考にしています。
NOACについて非常にわかりやすくまとまっているので、おすすめの書籍です!ぜひどうぞ!
メトグルコでの腎機能低下例はどれくらいから注意すればいい?
こんにちわ。
今回は腎機能低下例での処方可否について考えてみました。
腎機能低下例での投与制限のある薬剤は結構な数がありますよね。肝臓代謝、胆汁排泄ではなく、いわゆる腎臓排泄型の薬剤です。
処方頻度の特に高いものについては、事前にカットオフ値を頭に入れておくと非常に便利です。
腎機能低下例における投与可否の判断への足がかりとして、代謝が低下すると重篤な副作用が発現しやすいメトグルコを想定して考えてみました。
メトグルコについて
製剤写真・製品ロゴ一覧|メトグルコ錠250mg|大日本住友製薬 より引用
用量
開始用量は500mg/dayを分2,3とする。
維持用量は750~1500mg/day分2,3、上限は2250mg/dayである。
また小児に対する用量記載もある。
薬効薬理
糖新生の抑制、末梢における糖吸収の促進→膵β細胞インスリン分泌を介さずに血糖を降下させる
1錠 9.9円で医療経済的にも良い薬。
考察
まず開始用量が≦500mg/dayとなっているので、初回でこれより大用量が出ていたら警戒しましょう。
腎機能や脱水症状等患者の状態に十分注意して投与の中止や減量を検討すること。特に75歳以上の高齢者では、乳酸アシドーシスが多く報告されており、予後も不良であることが多いため、本剤投与の適否をより慎重に判断すること。〔国内における本剤の承認時までの臨床試験において、75歳以上の高齢者への1日1,500mgを超える用量の使用経験は限られている。〕(添付文書より引用)
→ 65歳以上、特に75歳以上の処方では特に用量に注意するべき。合わせてCCr、eGFRもチェックすること。超高齢者では維持用量でもせいぜい750mg/dayくらいまでという感触を受けます。
腎機能や患者の状態に十分注意して投与の適否や投与量の調節を検討すること。腎機能は、eGFRや血清クレアチニン値等を参考に判断すること。〔国内臨床試験における除外基準は、血清クレアチニン値が、成人では男性 1.3mg/dL、女性 1.2mg/dL以上、小児では血清クレアチニン値 1.0mg/dL超であった(「臨床成績」の項参照)。〕(添付文書より引用)
→ 筋肉量が通常生活を送れる程度の患者であれば、上記の血清Crが指標として使えるでしょう。
CKD ステージ分類では高度腎機能低下(stage G4)を GFR<30mL/min/1.73m2、中等度腎機能低下(stage G3)を 30≦GFR<60mL/min/1.73m2、軽度腎機能低下(stage G2)を 60≦GFR<90mL/min/1.73m2 としています。また 15mL/min/1.73m2<GFR(stage G5)を末期腎不全と表しています。(http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/Labs/clpharm/database/docs/qa02.pdf
より)
→ CKD分類より引用。メトグルコ添付文書には「中等度以上の腎機能障害では禁忌」となっている。つまりeGFR≦60あたりからとすることができる。
以上のことから、メトグルコ処方での注意を要するケースは、
1. 65~75歳以上の高齢者である
2. 血清Cr 1.2~1.3付近 以上
3. eGFR中等度低下基準の≦60
ただしeGFRも血清Cr値をもとに算出する値なので、通常生活が送れずに筋肉量が少なく血清Crがあまりに低い(<0.4)時は腎機能を過大評価してしまうこともあるので、そういった場合は患者ごとの個別対応が必要となってくるケースだと考えられます。
(※ eGFR (ml/分/1.73㎡) = 194×Cr^-1.094×年齢^-0.287より、Crが過剰に低いと正しい値を得られなくなる。)
なので、CCrやeGFRを指標として用いる場合はまず血清Cr値を事前にチェックしてからする必要があります。
実際に本人が通常生活を送れているようであれば、血清Crをもとにした計算式が指標として使えるでしょう。調剤薬局に本人が来局しているケースでは、しっかり運動量も日常的に取れており、問題ないかもしれませんね。
まとめ
今回はメトグルコにおいて用量可否の考察をしてみました。処方頻度も非常に高いので、これをきっかけに、腎機能指標を参照できるようになれればいいなと、個人的には考えております。
説得力を持った用量に対する疑義照会のためにも、以上の点はチェックできると良いですね!
精神系薬剤による口渇対策について
抗不安薬、抗鬱薬の服用による抗コリン性の口の乾きで困っている患者さんを結構な数、目にします。
日常的に頻繁に処方される抗不安薬でも、2, 3剤の併用でかなりの口渇が発生することはよくあることです。
そういった時に具体的に提案できる対策法をまとめてみました。
1. 物理的に唾液腺を刺激する
場所は名前のとおり、耳たぶの下あたりです。
実際に左右両方の耳下腺を指でやさしくぐりぐりしてみると、唾液がじんわり出てくるのを実感できます。
2. シュガーレスのガム、飴でごまかす
すぐにできますが、当然一時的な対策です。
血糖上昇の観点から、できるだけ人工甘味料系のものを選んだ方がいいと思います。
3. 市販の口渇対策グッズを勧める
市販の口腔ケア製品がおすすめできる。スプレータイプが1.5時間、ジェル製剤だと5~8時間ほどの効果が持続するようです。
手っ取り早く、かつ効果の高い方法であり、どんな方にでもおすすめしやすいです。
マウスピュア® 口腔ケアスプレー | 川本産業株式会社-えがおを、ずっと。えがおに、ずっと。 から引用
4. ドライマウス外来に対応した口腔外科を紹介
市販のスプレー製剤などで無効、また耳下腺マッサージが実行できない不整脈患者などでは、口腔外科に相談して唾液分泌製剤などを使用したほうがいいかもしれない。
具体的な薬剤名だとサリベート、サリグレンになる。
ただ上記の製剤の適応疾患が
- シェーグレン症候群による口腔感想
- 放射線治療の結果、唾液腺が障害されたことによる唾液分泌障害
の二つとなるため、保険適応で手に入れるのはもしかすると難しいかもしれない。
TEIJIN Medical Web 帝人ファーマ株式会社 製品情報より引用