メトグルコでの腎機能低下例はどれくらいから注意すればいい?
こんにちわ。
今回は腎機能低下例での処方可否について考えてみました。
腎機能低下例での投与制限のある薬剤は結構な数がありますよね。肝臓代謝、胆汁排泄ではなく、いわゆる腎臓排泄型の薬剤です。
処方頻度の特に高いものについては、事前にカットオフ値を頭に入れておくと非常に便利です。
腎機能低下例における投与可否の判断への足がかりとして、代謝が低下すると重篤な副作用が発現しやすいメトグルコを想定して考えてみました。
メトグルコについて
製剤写真・製品ロゴ一覧|メトグルコ錠250mg|大日本住友製薬 より引用
用量
開始用量は500mg/dayを分2,3とする。
維持用量は750~1500mg/day分2,3、上限は2250mg/dayである。
また小児に対する用量記載もある。
薬効薬理
糖新生の抑制、末梢における糖吸収の促進→膵β細胞インスリン分泌を介さずに血糖を降下させる
1錠 9.9円で医療経済的にも良い薬。
考察
まず開始用量が≦500mg/dayとなっているので、初回でこれより大用量が出ていたら警戒しましょう。
腎機能や脱水症状等患者の状態に十分注意して投与の中止や減量を検討すること。特に75歳以上の高齢者では、乳酸アシドーシスが多く報告されており、予後も不良であることが多いため、本剤投与の適否をより慎重に判断すること。〔国内における本剤の承認時までの臨床試験において、75歳以上の高齢者への1日1,500mgを超える用量の使用経験は限られている。〕(添付文書より引用)
→ 65歳以上、特に75歳以上の処方では特に用量に注意するべき。合わせてCCr、eGFRもチェックすること。超高齢者では維持用量でもせいぜい750mg/dayくらいまでという感触を受けます。
腎機能や患者の状態に十分注意して投与の適否や投与量の調節を検討すること。腎機能は、eGFRや血清クレアチニン値等を参考に判断すること。〔国内臨床試験における除外基準は、血清クレアチニン値が、成人では男性 1.3mg/dL、女性 1.2mg/dL以上、小児では血清クレアチニン値 1.0mg/dL超であった(「臨床成績」の項参照)。〕(添付文書より引用)
→ 筋肉量が通常生活を送れる程度の患者であれば、上記の血清Crが指標として使えるでしょう。
CKD ステージ分類では高度腎機能低下(stage G4)を GFR<30mL/min/1.73m2、中等度腎機能低下(stage G3)を 30≦GFR<60mL/min/1.73m2、軽度腎機能低下(stage G2)を 60≦GFR<90mL/min/1.73m2 としています。また 15mL/min/1.73m2<GFR(stage G5)を末期腎不全と表しています。(http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/Labs/clpharm/database/docs/qa02.pdf
より)
→ CKD分類より引用。メトグルコ添付文書には「中等度以上の腎機能障害では禁忌」となっている。つまりeGFR≦60あたりからとすることができる。
以上のことから、メトグルコ処方での注意を要するケースは、
1. 65~75歳以上の高齢者である
2. 血清Cr 1.2~1.3付近 以上
3. eGFR中等度低下基準の≦60
ただしeGFRも血清Cr値をもとに算出する値なので、通常生活が送れずに筋肉量が少なく血清Crがあまりに低い(<0.4)時は腎機能を過大評価してしまうこともあるので、そういった場合は患者ごとの個別対応が必要となってくるケースだと考えられます。
(※ eGFR (ml/分/1.73㎡) = 194×Cr^-1.094×年齢^-0.287より、Crが過剰に低いと正しい値を得られなくなる。)
なので、CCrやeGFRを指標として用いる場合はまず血清Cr値を事前にチェックしてからする必要があります。
実際に本人が通常生活を送れているようであれば、血清Crをもとにした計算式が指標として使えるでしょう。調剤薬局に本人が来局しているケースでは、しっかり運動量も日常的に取れており、問題ないかもしれませんね。
まとめ
今回はメトグルコにおいて用量可否の考察をしてみました。処方頻度も非常に高いので、これをきっかけに、腎機能指標を参照できるようになれればいいなと、個人的には考えております。
説得力を持った用量に対する疑義照会のためにも、以上の点はチェックできると良いですね!